カドカワが2016年4月に開校を予定しているネットの高校は「N高等学校」に名称が決定。2015年14日に発表会を開催し、その概要について公開した。
N高等学校は、デジタルネイティブ世代が夢見る、今のネット社会に対応した新しい高校とのこと。授業やレポート提出はネットで行うため、生徒は時間を問わず、自身のペースでいつでも授業を受けたり、ネットを通じて講師に質問することができる。またカドカワグループの利点を活かし、各業界のプロフェッショナルの講師陣によるプログラミング、文芸小説、ゲーム、アニメ、ファッション、美容など、多種多様な課外授業をネットで受けられるのも特徴。生徒は好きなときに好きなだけ、希望に添ったカリキュラムを選択できるという。
またこのほか、ネットだけでなく各地方自治体と連携して実施する「職業体験」の機会も提供。農業や漁業、伝統工芸など、実際に地方での職業体験に参加することで、早期に社会で役に立つスキルを身につける環境を用意するとのこと。さらにグループ会社であるドワンゴが運営する動画サービス「niconico」の「ニコニコ超会議」や「闘会議」といったリアルイベントへの体験機会も用意。ネットを通じて自由に授業を受けながら、リアルでの様々な体験機会も提供していくことで、新しい教育のあり方を実現するとのことだ。
行われた発表会では、カドカワの代表取締役会長である佐藤辰夫氏、同社代表取締役社長の川上量生氏、N高等学校の校長を務める奥平博一氏が登壇。同校の詳細について語ってくれた。
佐藤氏はN高校設立について「カドカワのコンテンツの力、ドワンゴのIT技術、niconicoの双方向コミュニケーションを結集して、理想の航行を実現したい」と語る。「引きこもりや不登校といった問題は一向に解決していないが、そう言う子たちはニコニコ動画、あるいはカドカワのライトノベルやマンガのファンだったりすることを考えると、現場からこういう高校を作って、そこに集まった生徒さんが社会との接点を見つけて、職業の教育を受ける。あるいは大学受験にチャレンジするといったことで、社会に出ていく場が作れたら理想」(佐藤氏)。
川上氏は「引きこもり、不登校は社会問題となっている。そういう子たちがどこに逃げ込んでいるかというと、ネット。まず100%ニコニコ動画のユーザー。またカドカワのコンテンツで精神的に救われている人もたくさんいると思う。社会的に行き場を失って取り残されている状態だが、ドワンゴもそういった人たちが集まって作った会社。社会からの落ちこぼれに見えるかもしれないが、中にはネットの時代に優れた能力を持っている人もたくさんいるだろうし、潜在的な可能性が社会的には活用されていない。むしろ彼らの方が主役になる時代が来る可能性がある。その時代に対応できるような高校。僕らがやらないと誰も作らないだろうと決心した」とコメントした。
初代校長に就任することとなった奥平氏は「長年教育に携わってきたが、生徒たちにとって本当に『あったらいいな』と思える学校、そして我々にとっても『こんな高校を作りたかった』と言えるような航行を実現したいと思っている」と語る。
N高等学校の本校は、沖縄県うるま市与那城伊計に置かれる。那覇からは約50キロほど離れているとのこと。元々は「伊計小中学校」としてあった建物を改築して使うことになる。在校生はここで年間5日間程度のスクーリングを受けることになるが、この内容についてはN高校ならではのものとなるとか。沖縄以外にも、東京と大阪にあるバンタンの教室で受けることも可能となっている。
そして授業料についても公開された。単位制高校のため同じとはならない可能性もあるが、一般的な例でいうと、3年間通ったとして合計65万円。文科省からの修学支援金を引いた形で約30万円の負担となる。なお、1単位あたりの授業料は5,000円だ。「通いたいと思う子は、アルバイトしながらでも十分通っていただける学費ではないかと思っている。また、修学支援金は1単位あたり4,812円なので、そのほとんどが就学支援金でまかなえる計算となっている」(佐藤氏)。
制服のデザインについても公開された。デザインはMAGESの志倉千代丸氏。どうしてもやりたいということで担当したそうだ。「制服がなせ必要なのかという人もいるかもしれないが、この制服を着ていくと、いろいろといいことが起こるというイベントも考えている」(川上氏)。
先ほども述べたように、N高等学校では学びたいときに学べるという学習スタイル。授業もレポートも全部ネットで完了する。授業だが、東京書籍の映像授業で高校卒業資格を取得できる。ただし、一番不安なのは質問だが、ネットの高校でも担任はきっちり付くとのこと。40人に1人という数で、担任が付くことになる。進路の相談や個人的な質問もいつでもできるようにするとのこと。
現状あるインターネットの授業との違いを問われて川上氏は「ネットではハーバード大学や東大の授業も公開されているが、それは動画として撮影された物が公開されている一方向の物。習熟度に合わせるなど、双方向性を活かしたあり方があるはず。その取り組みをしているところはないので、我々はいち早く取り入れたシステムを開発したい」と語った。
なおN高校のスペシャルサポーターとして、「ビリギャル」で有名な坪田信貴氏が就任。大学受験を目指す人をサポートすることとなる。「コンピューターを使った教育は、未来の教育の主流になると思っている。本来こちらの方が、学力を高めるのには向いているはず。通信制の高校といっても、高卒資格を与えて終わるのではなく、ちゃんと大学進学を目指せる高校を作っていこうというのが僕らの考え。最初の都市から東大生を出したいと思っている」と川上氏。
またこのほか、課外授業として、プログラミングの授業はドワンゴの戀塚昭彦氏や鈴木慎之介氏、Rubyの生みの親であるまつもとゆきひろしが講師に就任。「世界的に、プログラミング授業を初等教育に入れるべきだという議論はされているが、現代の日本ではプログラミングができれば100%食っていける。単位がもらえる授業ではないが、習得すれば必ず社会では職がある」(川上氏)。授業はドワンゴで使われている教材を用いるそうで、現役のエンジニアが受けるコースが元になっているが、普通の企画者などでも何か月か特訓をすれば初期のニコ動と同じ物を作れるまでになるそうだ。
またカドカワの強みを活かした課外授業も用意。こちらは作家の森村誠一氏を始め、ライトノベルで有名な川原礫氏、時雨沢恵一氏も講師として名を連ねる。イラストレーターになりたい人には、いとうのいぢ氏や黒星紅白氏の授業も。コミック作家やゲームクリエイターを目指す講座も開かれるという。「作家の先生方とは何度も話をしているが、先生方の創作の秘密に迫る話を聞いたことがないので、私自身が授業を受けたいと思うほど。新人賞の審査員もしているが、クリエイティブにはノウハウがあるし、心を学ぶのは貴重になると思う」(佐藤氏)。
ほかにもバンタンによるファッション、パティシエ・シェフ、トータルビューティーを学ぶ講座や、ゲームプログラミング、アニメ声優といった授業も。また通学したい人には、通学する日数を自分で選んでバンタンに通うコースも用意される。
コミュニケーションについても配慮されており、メールアドレスのほか、チャットツールであるSlackと、SNSのGitHubのアカウントを付与し、コミュニケーションを図る予定。そしてなんといってもポイントとなるのは、「ニコニコ超会議」を文化祭とすること。「闘会議」での課外活動や「ニコニコ町会議」で地元の友達とふれあったり、池袋のニコニコ本社で会うこともできるようにするそうだ。
そしてN高校の特色として、地方自治体との協力により、日本各地に宿泊しながら職業体験をすることができるとのこと。職業体験で社会性を培い、ビジネスマナー研修も行うとのことだ。
なお、来年4月の開校までのスケジュールは以下の通りとなっている。2015年11月9日午後9時からは、まつもとゆきひろ氏によるネットオープンキャンパスが開かれることとなっている。
川上量生氏が仕掛けるプロジェクトだけあって、通信制高校としてはこれまでにない充実ぶりであることは間違いない。興味のある人はネットオープンキャンパスや学校説明会に行ってみてはいかがだろうか。詳しくはN高等学校のWebサイトを参考にしてほしい。
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